Excel VBAで散布図に信頼区間と予測区間を表示するマクロを作ってみた3
前回のラストで、『統計学がわかる【回帰分析・因子分析編】』のデータが、線形よりも2次多項式回帰モデルのほうが当てはまりがよい(精度が高い)ことに気づきました。
横軸に最高気温、縦軸に架空のアイスクリーム店への来店者数をとって、日ごとの観測値がプロットされているのですが、回帰式から、34℃を頂点にそれより涼しくなるほど、または暑くなるほど来店者数が減る予測が立っています。暑くなるほどアイスが食べたい。でも暑すぎると外に出たくない、って感じでしょうか。
そこで今回は、前々回作ったマクロを実行後、分布の形状を見て近似曲線を2次多項式に変えたときに、信頼区間と予測区間を再計算するマクロを作ってみたいと思います。
計算方法
と思ったら、Yahoo知恵袋に答えがありました。
質問した方と回答した方に感謝です!
回答によると、
式は違っても,いずれも残差分散Veや標本数n,xの平均,xの平均からの偏差二乗和 Sxx を用います。
つまり,信頼区間を求めるのに,式の形がどうであるか,は関係ないのです。
回帰式が対数であっても,その式とデータとの残差の平方和を求めてVeを出せば,単回帰と同様に信頼区間が求まります。
との由。
とすると、新しい回帰式に基づいて予測値を再計算して、その後は前と同じ計算を繰り返せばいいだけ、なんですね。得たり賢し。
ソースコード
'近似曲線を2次多項式にした際の再計算 Sub Bivariate_Polynomial() Dim Cht, Tmp, Rng, y, x, n, a, b, c, xbar, Sxx, Se, F, haty, CI, PI, i, j If Selection.Columns.Count <> 2 Then MsgBox "独立変数(x)、従属変数(y)の順に2列の" & vbCrLf & _ "セル範囲を選択してから実行してください。", vbCritical Exit Sub ElseIf Selection(1).Row = 1 Then MsgBox "ラベル行は選択しないでください。", vbCritical Exit Sub End If Set Cht = ActiveSheet.ChartObjects(1).Chart With Cht.SeriesCollection(1).Trendlines(1) With .DataLabel .Left = 29 .Top = 11 End With Tmp = .DataLabel.Text '回帰式を取得 End With i = InStr(1, Tmp, "x2") j = InStr(i + 1, Tmp, "x") - 1 If i = 0 Then MsgBox "散布図中の近似曲線を「多項式近似」" & vbCrLf & _ "次数「2」にしてから実行してください。", vbCritical Exit Sub End If Application.ScreenUpdating = False Set Rng = Selection.Resize(1, 1).Offset(-1, 2) '基準セル Set y = Selection.Resize(, 1).Offset(, 1) '従属変数 Set x = Selection.Resize(, 1) '独立変数 n = x.Rows.Count '観測数 ReDim haty(1 To n) ReDim CI(1 To n) ReDim PI(1 To n) a = Val(Mid(Tmp, 4, i - 1)) '回帰係数(x^2の) b = Val(Mid(Tmp, i + 3, j)) '回帰係数(xの) c = Val(Mid(Tmp, j + 2, InStr(j, Tmp, "") - 1)) '切片 With Application.WorksheetFunction xbar = .Average(x) 'xの平均値 Sxx = .DevSq(x) 'xの偏差平方和 For i = 1 To n haty(i) = a * x(i, 1) ^ 2 + b * x(i, 1) + c 'yの予測値 Next Se = .SumXMY2(y, haty) '残差平方和 'F検定 F = ((Syy - Se) / 2) / (Se / (n - 3)) Rng.Offset(1, 7).Value = .F_Dist_RT(F, 2, n - 3) F = .F_Inv_RT(0.05, 2, n - 3) '区間推定用のF値 End With '信頼区間と予測区間と標準化残差 For i = 1 To n '信頼区間の幅 CI(i) = Sqr(F * (1 / n + (x(i, 1) - xbar) ^ 2 / Sxx) * Se / (n - 3)) '予測区間の幅 PI(i) = Sqr(F * (1 + 1 / n + (x(i, 1) - xbar) ^ 2 / Sxx) * Se / (n - 3)) With Rng .Offset(i).Value = haty(i) - CI(i) '信頼区間下限 .Offset(i, 1).Value = haty(i) + CI(i) '信頼区間上限 .Offset(i, 2).Value = haty(i) - PI(i) '予測区間下限 .Offset(i, 3).Value = haty(i) + PI(i) '予測区間上限 With .Offset(i, 4) .Value = (y(i, 1) - haty(i)) / Sqr(Se / (n - 3)) '標準化残差 '標準化残差の絶対値が3を超える場合は警告 If Abs(.Value) > 3 Then .Font.Color = vbRed End With End With Next With Cht '横軸の最小値 .Axes(xlCategory).MinimumScale = Round(WorksheetFunction.Min(x) - 1, 0) '縦軸の最小値 .Axes(xlValue).MinimumScale = _ Round(WorksheetFunction.Min(Rng.Offset(1, 2).Resize(n)) - 1, 0) End With Application.ScreenUpdating = True End Sub
コードの解説
ほとんど前々回に作ったマクロの丸写しなのですが、再計算なのでセル書式のところとかグラフ作成の部分はカットしてあります。
新たに付け加えたり変更したのは2箇所。
ひとつは2次多項式から回帰係数と切片を取得するところです。
Set Cht = ActiveSheet.ChartObjects(1).Chart
With Cht.SeriesCollection(1).Trendlines(1)
Tmp = .DataLabel.Text '回帰式を取得
End With
i = InStr(1, Tmp, "x2")
j = InStr(i + 1, Tmp, "x") - 1
a = Val(Mid(Tmp, 4, i - 1)) '回帰係数(x^2の)
b = Val(Mid(Tmp, i + 3, j)) '回帰係数(xの)
c = Val(Mid(Tmp, j + 2, InStr(j, Tmp, "") - 1)) '切片
ご覧のとおり、グラフのデータラベルのテキストから一つずつ抜き出しています。
もうひとつは、残差分散・F 検定・F 値の計算が前と違ってます。
Syy = .DevSq(y) 'yの偏差平方和
F = ((Syy - Se) / 2) / (Se / (n - 3))
Rng.Offset(1, 7).Value = .F_Dist_RT(F, 2, n - 3)
F = .F_Inv_RT(0.05, 2, n - 3) '区間推定用のF値
前回は F = (a ^ 2 * Sxx) / (Se / (n - 2)) で F 値を求めましたが、回帰係数がaとbの2個になったので、(a ^ 2 * Sxx) は使えません。一瞬途方に暮れましたが、ネットでいろいろ調べるうちに、F 値は[回帰分散÷残差分散]で求められるんだから、重回帰分析に準じて計算すればいいじゃん、ということに気づきました。
そこで『マンガでわかる統計学 回帰分析編』124ページの数式
を使うことで解決。それに伴ってワークシート関数の引数も修正です。その他の残差分散の計算箇所も全て修正しました。
使い方と実行結果
マクロ[Scatter_Plot]を実行した直後から説明します。
- 分布の形状から2次多項式を試してみようと思ったら、
- 回帰直線(赤い線)をダブルクリックします。
- 近似曲線の書式設定で[多項式近似]にチェックを入れます。(次数は必ず「2」にしてください。)
- 寄与率(R2値)が高くなったことを確認して、
- データ範囲を選択して、[開発]→[マクロ]→[Bivariate_Polynomial]を選択→【実行】をクリックします。
- 実行結果です。
DからH列の値およびK2セルの値が書き換わり、信頼区間と予測区間が曲線になりました。
信頼区間と予測区間の間隔が狭まっていることにお気づきいただけますでしょうか?
グラフにすると、寄与率の値だけでなく、ビジュアルにも回帰モデルの精度を確認することができますね。